2012年 ケータリング会社を起業してから約6年。
起業としては大成功と言える。外資企業からの注文もレギュラー化し、イベント会場からの提携も次々と舞い込んで来た。有名人から依頼も度々であった。
しかし、子供2人の育児に追われる妻のストレスが爆発寸前であった。理由は僕の仕事が忙しすぎて、家庭を全く省みることができない状態だった。
度重なる夫婦喧嘩。妻は「子供が小さいこの時、一緒に過ごせないと本当に後悔するよ。」「子供にはパパが必要だよ。」と何度も泣きながら訴えてくれていた。僕は僕なりにパパとして関わっていたつもりではあった。それでも「今は仕方がない。これも家族の将来のためだ。」とわかってくれない妻を振り切って、会社経営に精を出していた。会場空間デザインからイベント企画、現場も指揮とりながら自分は誰よりも頑張っっていると自負があった。一方で理解してくれない妻の忠告に対して腹立ったことも。
妻の不満に対して僕は内心で、「経済的に楽になって、子供たちを好きな幼稚園にも入れられてる。そんなにしんどいなら家事手伝いでも雇えば良いじゃないか?」と思ったものだった。
そんなある日、従業員の1人が悪態をついて働いている姿を目にした。
ふっと何か自分の中で崩れる音が聞こえるような感覚に襲われた。自分は何のために頑張ってきたのか? 頑張りは誰のためだったか? ゆとりが全くない生活を送っていることに気づいたというよりも見えてしまったという感じだった。
2012年8月3日
僕は夜遅くに帰宅、妻はまだ起きていた。僕は妻に告げた。「俺、会社を売るわ。」妻は驚く様子がなかった。しかし、不思議そうな目線で僕に話し始めた。その前夜に夢を見たという。その内容は僕が突然、彼女に海外移住しようと言い出したものだった。朝、僕が慌ただしく出かけたので夜に話そうと思っていたという。

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